コラム

建物を購入した後で雨漏りがあることが分かりました。売主に責任を問うためにどのような準備が必要でしょうか。(2)

前回の記事「建物を購入した後で雨漏りがあることが分かりました。売主に責任を問うためにどのような準備が必要でしょうか。」の続きになります。

昨年12月に、大阪府吹田市で中古の土地建物(戸建)を購入した者です。建築紛争について、法律相談させてください。

購入して入居後の約2ヶ月後、大型台風の影響で1階の台所に大量の雨漏りがありました。仲介業者に相談したのですが、「隠れた瑕疵については特約で免除になっているので売主に責任は問えない。」と言われました。その後、雨漏り調査を行うと、雨漏りの原因は1階の台所に必要なシーリング処理が足りていないこと、窓枠自体の損傷している箇所もあること等が判明し、少し水をかけると簡単に再現可能な雨漏りでした。その後も雨漏りは続き、約半年間で、台風以外にも計3回ほど、横風を伴う雨の際に、コップ半分程度の量の雨漏りが発生しています。

建物の現況報告書には、「5年前に台所の窓に雨漏りあり、シーリング処置した。」と書いてあり、契約の席上、「以降5年間雨漏りはないか。」と私が口頭で直接尋ねた際も、売主(一般人)は一切ないとの返答でした。今になって思うと、「5年間雨漏りなし」という売主の発言は、虚偽の申告ではなかったのか、と疑っております。

仲介業者の言うように、売主の責任は問えないのでしょうか。仮に訴訟をする場合、どのような準備と費用が必要でしょうか。また、雨漏りの原因調査などに費用がかかっているのですが、これも請求することは出来ないでしょうか。

4.売主の賠償責任が認められるための主な要件③:「虚偽の申告」に対する「故意」または「認識可能性」

3番目に、「虚偽の申告」に対する売主(側)の「故意」または「認識可能性」(≒重過失)が必要になります。

「虚偽の申告」だけで、責任が認められる可能性がゼロとは申しませんが、前述の通り、売主が一般人で(売主側の)仲介業者を介した不動産売買の場合、売主本人の説明義務の程度は大幅に軽減されていますので、そのように判断するのは早計と思われます。

(1)「故意」が認められれば、賠償責任(≒説明義務違反)はほぼ認められると考えて差し支えありません。

(2)「認識可能性」は、認められても、賠償責任は否定される場合もあり(肯定される場合もあります)、この辺りは裁判例も分かれており、ケースバイケースです。

(1)「故意」については、(当たり前ですが)売主本人が認めれば肯定されますが、売主本人が否定する場合でも、近隣住民などの第三者の証言などによって肯定される場合もありますので、訴訟を検討される際は、ご近所への聞取り調査もしっかり行うべきです。

因みに、「故意」の証明責任は買主にあり、当職の経験を踏まえた一般論として申し上げると、売主の「故意」の立証は難しい(≒失敗する)ことが多いです。

(2)「認識可能性」は、特に「故意」の立証が難しい場合に主張立証していくもので、当該「瑕疵」(不具合)の状態・程度・内容・場所、外部・外観から認識し得るかどうかやその程度、売主の地位(素人か業者か)や当該物件への出入り状況(住んでいたのか誰かに貸していたのか空き家だったのか等)、等から総合的に判断していくことになります。

第一の判断の分かれ目としては、不具合の程度や外部から見た認識しやすさであり、不具合の程度が軽いものや外部から認識しにくいものは認識可能性が否定され易い傾向にあります。

東京地裁平成14年2月22日判決は、問題となった「変圧器付き電柱」が建物の前面に位置していた案件で、「(売主は)建物を販売する者として、当然これを知りうる立場にあったのであるから、その存在を知らなかったからといって、この義務を免れるものではない」として、売主の説明義務(違反)を肯定しました。

東京地裁平成13年9月26日判決は、「不動産の売主は、地盤沈下問題の重要性は容易に認識できた」として、売主の説明義務(違反)を肯定しました。

他方で、東京地裁平成16年6月4日判決は、「売主が物件近くの葬儀場の建築計画を知り得たとは認められない」として、売主の説明義務を否定しました。

また当職が過去扱った建築紛争事例のうち地盤沈下事例では、売主(素人)のみならず、下見に来た買主や仲介業者もすぐに建物の不同沈下に気が付かなかった事例で、裁判所は売主の認識可能性を否定いたしました。

このように、不具合の程度や外部からの認識しやすさ等によって判断が変わり得ますので、注意が必要です。

第二の判断の分かれ目は、売主が素人かで、素人であれば認識可能性は肯定されにくく、業者であれば認識可能性は肯定されやすい傾向にあります。

その他裁判例や私の経験を踏まえて私見を申し上げると、ご相談内容からすると、雨漏りの原因となった不具合の程度は相当酷いようであり、酷い「雨漏り」の発見(の可否)は、場所次第では素人か業者かで大きく変わるようなものでもありません。

今回の雨漏りが台所という日常的に使用する部位であることからすると、売主が一般人であることを考慮しても、5年前の雨漏りの補修以降、当該建物へほとんど訪れていなかった等という事情があれば別論、継続的に当該建物に出入りしていた(ないし居住していた)というのであれば、「故意」は兎も角、「認識可能性」まで否定されてしまうのには違和感を覚えます。

即断は出来ませんが、「認識可能性」が認められる余地(可能性)はあるように思われます。

次回に続きます

弁護士 中村 真二

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