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圓尾一恵の社労士コラム VOL.3 社会保険の適用拡大と国民年金の被保険者種別 ~扶養範囲との関係について~

社会保険の適用拡大によって、国民年金にのみ加入している短時間労働者の方が厚生年金保険に加入することになると、国民年金の被保険者の種別が変更になります。

国民年金の被保険者種別は、国民年金、厚生年金の加入の状況や扶養の有無などにより分類されています。 その種別の特徴や違いを知っていただき、社会保険に加入することとの関わりをご確認ください。

 1. 国民年金の被保険者種別

国民年金保険には、職業などにより、第1号・第2号・第3号という3つの被保険者の種別があります。
3つの種別の特徴を大きく分類しますと、国民年金のみに加入している第1号被保険者および第3号被保険者と、
国民年金と厚生年金の両方に加入している第2号被保険者に分けることができます。
すなわち、新たに厚生年金保険に加入すると、第2号被保険者に種別が変わります。

(1)第1号被保険者

20歳以上60歳未満の自営業者,学生,無職の方など、2号または3号被保険者にあてはまらない方。

 *保険料:国民年金保険料を支払います。
   年度毎に決定され、保険料額は一律です。(平成4年度の保険料は16,590円)

 *支払方法:ご自身で支払います。

 *届出:ご自身で、お住まいの各市区町村に届出します。

 *年金:ご自身の国民年金を受け取ります
   (金額は加入期間や加算額など個々の状況により計算されます。)

(2)第2号被保険者

国民年金加入者のうち、民間会社員や公務員などお勤め先で厚生年金または共済に加入している方。
但し、65歳以上の方で、老齢基礎・厚生年金、退職共済年金などの受給権がある方はなれません。

 *保険料:厚生年金保険料として、報酬に比例した保険料を支払います。
   保険料額は、標準報酬月額※により決まり、その2分の1が被保険者が負担する額となります。
   別途、国民年金保険料を負担することはありません。

 *支払方法:毎月の給与および賞与から保険料の2分の1の額が控除されます。
   残りの半分は事業主が負担し、あわせて事業主が日本年金機構に支払います。
   ご自身が直接保険料を支払うことはありません。

 *届出:お勤めの会社を経由して日本年金機構に届出します。
   ご自身が直接手続をすることはありません。

 *年金:厚生年金と国民年金の合計額(2階建ての年金)を受け取ります。
  (報酬比例のため、個々の報酬の額や加入状況によって金額は違います。)

※標準報酬月額とは
被保険者の実際の報酬を一定区分した標準報酬に当てはめた額を標準報酬月額といいます。
保険料の算出の基礎となる他、健康保険の出産手当金や傷病手当金、厚生年金の支給額などが標準報酬月額を基に計算されます。

(3)第3号被保険者

国民年金加入者のうち、第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者で、一定の収入要件を満たしている方。

 *保険料:国民年金保険料の負担はありません

 *支払方法:ご自身で支払うことはありません。

 *届出:第2号被保険者(配偶者)のお勤めの会社を経由して、日本年金機構に届出をします。
   ご自身が直接届出することはありません。

 *年金:ご自身の国民年金を受け取ります。
  (金額は国民年金の加入期間や加算額など個々の状況により計算されます。)

2.社会保険の扶養範囲について

扶養の範囲を考えるとき、103万円は所得税、130万円が社会保険の扶養をあらわす数字であることはご存じの方も多いかと思います。
社会保険の扶養範囲にかかわる収入要件は、社会保険の適用拡大により、年収130万円のほかにも意識したい年収の額が、新しく加わることになりました。

(1)扶養の範囲と年収の額

①年収130万円以上
国民年金の第3号被保険者(企業で働く方や公務員の方の配偶者で保険料が免除されている方)となるためには、年収130万円未満という収入要件があります。
そのため、年収が130万円以上になると、扶養から外れて第3号被保険者ではなくなり、ご自身で保険料を負担することになります。

②年収106万円以上
社会保険の適用拡大の一定要件(詳しくは、コラムVOL.1(1)でご説明していますのでご覧ください。)を満たした時には、パートやアルバイトで働く短時間労働者の方であっても、社会保険に加入して厚生年金保険料や健康保険料などの保険料を負担することになります。
この一定要件のうち、収入の要件となるのが月額8万8000円以上ですが、こちらを年収に換算すると、年収106万円以上の方ということになります。
注意して頂きたいのは、年収が130万円未満である第3号被保険者の方であっても、このような場合には、社会保険に加入して保険料を負担することになります。

(2)第3号被保険者に関する届出

上記(1)の①②のような場合や、その他にも、第3号被保険者に該当した時や、非該当になった時には、
以下のような届出が必要です。

①第3号に該当したとき
配偶者のお勤め先に届出「被扶養者異動届」が必要です。

②第3号から第2号になったとき
配偶者のお勤め先に届出「第3号被保険者非該当」が必要な場合があります。
ただし、配偶者の加入する健康保険が協会けんぽであった場合には、届出の必要はありません。

③第3号から第1号になったとき
配偶者のお勤め先に届出「第3号被保険者非該当」が必要です。

3.最後に

このように、社会保険適用の新たな対象となるのは、国民年金種別が第1号または第3号被保険者の方ということになります。年収106万円以上という基準は、全ての方にあてはまるものではありませんが、今後、社会保険の適用が拡大する中では、これからも、多くの方に影響を与えていくことになると考えられます。

ライフスタイルの中で、働くことをどう位置づけるのかは、個々の事情により違っています。
社会保険に加入すると、将来もらう自分の年金を少しでも増やすことができるだけでなく、年金の保証、健康保険の補償の内容にこれまでより手厚くなるものがありますので、メリットは多くあります。

しかし、保険料の負担により、現在の手取収入が減ってしまう、扶養範囲から外れると手当が受けられなくなってしまうなどのケースがあると、これはデメリットと感じます。

メリットやデメリットについて知り、様々な働き方を視野に入れ、ご自身のライフスタイルにあった最良の選択をしていただきたいと思います。

社会保険労務士 圓尾 一恵

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